銀花翠葉

アニメの感想ブログです(更新は終了しました)

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「まどかマギカ」で見たもの(11)

やくたいもない各話感想のつづき。11話について。


(※ネタバレ注意)



■#11 ほむら無双すぎ ワルプルギス無敵すぎ

11話と12話、どっちをとるか。
という話をまず。


初回視聴時には11話のインパクトが圧倒的でした。
何しろ対ワルプルギス戦のアクションのすごさに呆然としてしまって。
くらべて最終話は、結局どういう話のオチだったのか一回では全然わからなかったうえ、世界中&歴史上の魔法少女たちがいちいち出てくるのも鬱陶しい感じだった。
アルティメットさんはカッコよかったけど、ちょっとしか出ない。

そういうわけで、初見時には11話が断然よいと思った。
最終話は半ばエピローグだから、番外扱いでもいいやと。
ところが、何度も見るうちに評価が逆転してきました。
くり返し見て嫌にならないのは12話の方で、11話はよくよく考えると疵があるような気がしてきた。
(3話と4話の関係に似ている。)
個人的には12話(前半)の映像ヴィジュアルを高く買います。


★  ★  ★


11話の疵というのはなにか。
別にたいしたことではないですが、その話を最初に片付けます。

11話は、ほむらのストーリーの大詰め。
彼女がどうしようもないジレンマに追い詰められていく経緯が話の核になる。
10話では、ほむらの決意とヒロイックな生き様を見せて視聴者を感動させた。
11話でいきなりそれが逆転してしまう。

かんたんに整理すると、以下のαとβのジレンマということ。


α.まどかが最強の魔法少女=魔女になったのは、ほむらの時間遡行が原因だった。ほむらが時間を巻き戻すたびに、まどかの背負う因果が増えていってしまう。

これは冒頭のアバンで、QBがほむらに告げていること。
具体的にセリフを引くと、
「魔法少女としての潜在力はね、背負い込んだ因果の量で決まってくる。」
「やっぱりね、原因は君にあったんだ。正しくは、君の魔法の副作用というべきかな。」
「…何度も時間を遡るうちに、君はいくつもの平行世界を螺旋状に束ねてしまったんだろう。鹿目まどかの存在を中心軸にしてね。その結果、けして絡まるはずのなかった平行世界の因果線が、すべて今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら…。彼女の、あの途方もない魔力係数にも納得がいく。」
云々。

結論として、ほむらこそ「あらゆる出来事の元凶」だったのであり、
「お手柄だよ、ほむら。君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ。」
ということになる。


β.ほむらは、絶望して諦めた瞬間に自分が魔女化してしまうことを知っているため、決して立ち止まれない。なんど敗れても繰り返しワルプルギスと闘わざるを得ない。

これは避難所の廊下の場面で、QBがまどかに説明している。
「…何度でも性懲りもなく、この無意味な連鎖をくり返すんだろうね。もはや今の彼女にとって、立ち止まることと、あきらめることは同義だ。(略)何もかもが無駄だったと、けしてまどかの運命を変えられないと確信したその瞬間に、暁美ほむらは絶望に負けて、グリーフシードへと変わるだろう。彼女自身もわかってるんだ。だから選択肢なんてない。勝ち目のあるなしにかかわらず、ほむらは戦うしかないんだよ。」
(まどか)「希望をもつかぎり、救われないっていうの?」
「そうさ(以下略)」
云々。


上記αとβは、きれいに背反するジレンマで、β→α→β→α→…という悪循環になる。
ほむらは自縄自縛的な陥穽にはまっているわけです。
11話の最後、重傷を負ったほむらは、時間を巻き戻してやり直そうとしたそのとき、「くり返せば、それだけまどかの因果が増える」ことを思い出して、進退きわまってしまう。
「私のやってきたことは、結局…(泣く)」と、魔女化寸前まで行ってしまうことになる。
その流れを考えると、α×βのジレンマが11話の要だと言ったっていいように思われます。

すると、αとβをどういう段取りでほむら達や視聴者に明かしていくかが問題になる。
ほむらがジレンマにはまっていくプロセス(論理過程)を手順よく、かつ劇的に見せること。それが作劇上の課題になってくるはず。
ところが。実際には、
αもβも、QBの説明台詞(だけ)であっさり語られてしまっている。
特に、いちばん肝心なαが、アバンでいきなり説明されてしまう。
このあっけなさにはけっこう驚く。
αβはもっとドラマティックに説き明かされるべきではないのか…。
映像的にも、αとβの語られるシーンにはあまりインパクトがない。

そういうのが、11話について個人的に感じる疑問点です。


なお、αとβを比べたら、どちらかといえばαの方が重要な情報になる。
βは、まどかや視聴者には新しい情報ですが、ほむら自身はよくよく承知していることのはずなので。
一方、αは、ほむらの行動が全部裏目に出て皮肉な結果を生んでいたということであって、ほむら自身はまったくそれに気づいていなかった。
だからQBにαを指摘されることは、ほむらにとって致命的な打撃になる。
α×βのジレンマが発生することで、ほむらの物語の意味が全部ひっくり返る。
よってαという真相の暴露は、相当インパクト大に表現されないといけないはずです。

もしかすると脚本家は、10話のあとの一番最初のシーンにいきなりαをもって来ることで、劇的な逆転効果をねらっていたのかもしれません。
が、映像でそのインパクトが表現されているかどうかはまた別の問題。


★  ★  ★


11話には物語上の大きなテーマが二つあって、ひとつは「ほむらの窮地」、もうひとつは「まどかの決心と旅立ち」みたいな内容です。
本当は、この二つのテーマにそれぞれ一話ずつ割いて、ていねいに起承転結のドラマを作れたらよかったような気もする。
一話の中で両方ともやってしまうのが苦しい感じ。
話数の制約なのでしょうが、もう一話分使えていれば、ほむらの物語はもっとわかりやすくできたはず(と思う)。

この11話に、すごく色々なことをつめ込み過ぎているのは確かなので、どこかを強調すれば残りの部分の焦点がぼやけるのは仕方ないかもしれない。
それは脚本の構成の問題でもあるし、映像化の問題でもある。
映像的に、11話の中のどこを強調すべきかという問題。


★  ★  ★


11話の場面割りを便宜上、以下のように整理する。
整理したうえで各シーンにコメント。

(前半)
アバン。ほむらの部屋(QBとほむら) ―α
A. さやかの告別式、鹿目家の玄関先
B. まどかの部屋(QBによる「家畜」や「人類の歴史」説明)。
C. どこかのバー(詢子と早乙女和子)

(後半)
D. ほむらの部屋(まどかとほむら)
E1. 災害の迫る市街(河川敷でワルプルギスの出現を待つほむら)
F1. 避難所(まどか一家)
E2. 市街(戦闘、ほむら対ワルプルギス)
F2. 避難所(まどかとQB、まどかと詢子) ―β
E3. 市街(絶体絶命のほむら、駆けつけるまどか)


11話の最大の目玉はもちろんE2のシーン(ワルプルギスとのガチアクション)ですが、
それ以外だと、どこの場面(の映像)が印象的か。
個人的には、C(バーでの会話シーン)や、B(「家畜」「人類の歴史」のシーン)がへんに記憶にのこる。
Bは、劇団イヌカレー画を使っているため印象的になる。
Cは演出や画面設計が、この作品らしい独特な感じ(後述)。
BもCも、後の話への伏線になるので抜くわけにはいかないシーンですが、しかし11話のなかでの重要度はそんなに高くないと思う。
けれども、ヴィジュアル的な印象の強さで視聴者の注意はそこへ向く。

逆に、ストーリー的に大切なアバンや、Dや、F2のシーンが相対的に地味な映像になっている。
上述のαβが語られる場面もあまり記憶に刻まれず、一見してそこが大事だとは気づかれにくい。
E2の戦闘シーンが凄いのは、それはそれでよいわけですが、あそこを派手にやり過ぎることで、他の場面の印象をかき消してしまうデメリットもあるでしょう。
全体的に見て、あまり重要でない所でヴィジュアルに凝っている感じがする。
11話全体としてのリズムやバランスを失している感がなくもない。


★  ★  ★


アバン。
ほむらは、QBからαを知らされて甚大なショックを受けているはずなのですが、映像はそれほど大袈裟な演出をしていない。
αが重要な情報だということもあまり伝わってこない(と感じる)。
シナリオには《ショックのあまり、目を見開いてわななくほむら》というト書きがあります(「あらゆる出来事の元凶として、ね」のあと)。
映像はこの箇所で、スカートの裾をぎゅっとつまむカットを挿入するだけ。


A、椅子について。
さやかの告別式から帰宅したまどか。玄関先のシーン。
玄関から奥へつづく廊下の左右に、種々のデザインの椅子(黒いシルエット)が見える。


B、まどかの部屋。
QBが「インキュベーターと人類が共に歩んできた歴史」を説明する。
9話の「エントロピー」シーンとちょっと似た雰囲気がある。
QBの説明中、イヌカレー画を見せたり、まどかが宙を漂って回転して落下するスローモーションを細かい作画で見せる、などをやっている。

説明が終わったあと(排水口のカットで画面サイズがもとに戻ったあと)に、いちばん興味深いショットがある。
室内をナナメ方向に(まどかの机のある辺りから)とらえている画面ですが、
画面右側には、ベッドの上で手をついているまどか。
画面左側には、床と壁を這ってQBの影(首が長い)が無気味にのびている。
まどかとQBの影が、そっぽを向きながら対話しているような感じになっている。

このショットでは、ベッドの足側に置かれていた(はずの)二脚の椅子のうち、一脚が消えています。
もう一脚も位置が変わっている(そうでないと椅子がQBの影を遮ってしまう)。
やはりこれらの椅子は、実在する物体ではなく、幻想イメージなのだろうか。


C、詢子と和子がバーで会話するシーン。
ここのシーンを最初に見たとき、個人的にやけに注意を引かれて、こういうのがこのアニメの映像の特徴なんだろうかと、漠然と思った。
シナリオでは、ガード下のおでん屋台で二人が飲んでいるのですが、映像ではここも独特な美術設計になっている。
豪華なお店なのに他の客は誰もいない。店員も見えない。「アダムの創造」らしい絵。シュール。

広い店内空間に、詢子と和子が小さくならんでカウンター席にかけている。
背後から二人を見るロングショットがマスターショットですが、カメラの方向が変わって、左右の色の関係が逆になったりするため、混乱させられる。

色で画面が左右に分割される(ロングショット時)。
和子側に赤のライト、詢子側に窓からの青い光が当たっている。
グラスの中の飲みものはそれぞれ逆色になっている。
映像のフォーマリズムというか、スタイル重視の映像だと主張している感じ。

色分けに明確な意味はないと思う。
青い色は詢子の沈んだ心情を表わしているとも言えるのでしょうが、会話によれば和子の方も精神的ダメージを相当受けているらしいので、彼女に赤い色をつけることの説明になりません。
いっそ画面全体を青い光に沈めちゃってかまわないような気もする。


D、まどかの涙の流れる方向。

E1、河川敷の街灯が多すぎる。


E2、このシーンについては、今さらなにも。
ワルプルギスが姿をあらわすところは、ほんとに鳥肌もので感動する。
サーカスのような行列が通り過ぎていく華麗なイメージ。それに、あの音楽!
対ワルプルギス戦のシーンだけでもこのアニメは語り草になったでしょうね。
ミリタリー好きの人たちがとても喜びそうなシーンだけど。

ワルプルギス登場の直前、細かいカットやカウントダウン表示みたいなのが沢山出ますが、あれは何かを意味しているのか。解釈できていない。
レースつきの幕がひらくのは第一話アバンの冒頭と同じに見える。


F2、母と娘が訣別する階段のシーン。
ほむらの決戦とならんで、11話の目玉になる見せ場、のはず。
とはいえ、個人的にこのシーンには相当の疑問をおぼえる。
…まどかは母親から自立をとげて、旅立っていく。
…詢子はまどかの行動に道理があることを信じて、断腸の思いで娘を見送った。
そういうシーンであることは一応了解できるものの、映像を見ていて心理的にすごく違和感がある。

以下は、ほんとうに個人的な感想というか、イチャモンというか…。

詢子さんは、よくあれほど冷徹にまどかを見送れたものだ(と見ていて思う)。
ここで行かせたら娘は二度と帰ってこない。と察してもよいはずなのに。
ふつうの親なら、災害時のああした状況で、子供を出て行かせるわけがない。たとえどんな大事な理由があるらしいにせよ…。
母親だったら抱きついてでも娘を止めようとするはず…。親ならそれが自然…。
というのがごく私的な偏見?僻見?です。

「絶対に下手打ったりしないな? 誰かのウソに踊らされてねえな?」
というセリフがあの状況で出てくるのが、個人的にはなんとも理解不能。
脚本家の人がこういうセリフを好む作風なのはわかりますが。

階段を舞台にして、上(詢子)と下(まどか)の位置関係を強調する配置にしている。
まどかと詢子は、ここで対等の関係になって話すわけだから、同じ高さに立たせた方がいいんじゃないの?とか思うのは、浅薄な素人考えでしょうか。
あるいは、まどかが上で詢子が下とか。

階段を上から見下ろす構図のとき、まどかが奈落へ向かって落ちていくみたいで、一度手を放したらおしまいだとか、そんな不安を(こちらは)見ながら感じる。
ところが詢子は、娘の背中をたたいて谷底へつき落としてしまう。
逆にまどかの視点では、畏怖するように母親を見上げながら話すことになる。
母親の顔は威厳ありまくりで、ものすごく怖い(明暗を強調したアップ顔など)。
お別れのシーンなのに、なんかちぐはぐ、な気持ちになってしまうよ。

まどかが去るのを見送った詢子は、その直後どんな思いでいるのか。どんな顔をしているのか。どんな動作をするか。
映像はそれをまったく描かない。わざと描かなかったのかもしれません(なぜ…?)。
シナリオには、《雨の中へと駆け去っていくまどか。その背中を、痛切な面持ちで見守る詢子》と書いてあるんですが。

個人的に、この階段シーンを見ていて、まどかと詢子のどちらにも自然な感情移入ができない。
それはどういうことなのか。
何というか、ちょっと不思議なシーンです。


(つづく)
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