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銀花翠葉

アニメの感想ブログです(更新は終了しました。)

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恋するハートフル商店街 ~「たまこまーけっと」2話~

「たまこまーけっと」論。
2話のこと。


ハートマーク乱舞がすごい。

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2話と6話は、話が似ている部分がある。
どちらもたまこが企画提案して、商店街に客を呼ぼうとするお話。
といっても、話の落としどころはまったく異なる。
全体としては大きく違った物語になっている。

6話のほうは、お化屋敷が成功して、商店街に人が集まって、「めでたしめでたし」で終わる。
目標の達成という意味で、オーソドックスな話作りになっています。
けれど2話の場合は、最終的に客寄せに成功したかどうかというのは、わりとどうでもよくなっていて、肝心なのはそこではない。
たまこがやりたかったのは、とにかく商店街をバレンタイン色に染めること、
ハートだらけのラブラブ空間に変えてしまうこと、だった。
それさえ実現すれば、たまこの目論見はすでに達成されちゃっている。
そんな感じに見える。

2話は…
ハートマークで埋めつくされた「恋する商店街」を舞台に、
いろんな人のいろんな「ラブ」が入り乱れて飛び交う。
それが最後にはひとつに溶け合って流れて、
「みんな誰かを愛してる」「誰が誰を好きになってもいい」
みたいなところへ収斂していく。
2話のお話でやりたかったのは結局そういうことのようです。




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2話というと、みどりの「恋心」がクローズアップされているので、
彼女のお話というイメージが強いのですが、
よく見るとみどりの「恋」はあくまでお話の一要素のようでもあって、
そのあたりを追いかけて見てみると・・・

みどりはお祖父ちゃんから、
「Everybody Loves Somebody = みんな誰かを愛してる」
という言葉を聞かされて、そのせいで、
自分はもしかしたらたまこに「恋」している?
と、急に意識してしまったらしい。
そこらへんの映像表現がおもしろい。

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みどりのドラマチックな「振りむき」があって、
商店街の屋根を見まわしても、おもちゃ屋の店先を見ても、いたるところハートだらけ。
ぽーっとなってたまこの方を見詰めていると、
たまこが手でハートマークをつくったり。
画面がぐらぐら揺れるのはもちろんみどりの心情表現。

撮影再開後、かんながくしゃみをしてデラがまた勘違いする芝居が入りますが、
それも「惚れたはれた」の話なので、みどりによけい「恋」を意識させる。
おかげで胸が苦しくなって、「星とピエロ」へ逃げていくという流れ。
お店ではマスターがうまいこと言ってまとめてくれた(?)
「誰にも、名前のつけられない気持ちがある…。それゆえ、人は切なくなる…。」


マスターがレコードかけて音楽が流れだすと、
音楽にのって映像もいろいろ流れますが、そこで何が映るか。

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商店街のひとたちが笑顔ふりまいているCMのカット。
もち蔵がたまやの前で着ぐるみ娘を撮っているカット。
店の中からその様子を見ている豆大も映っている。

これらのカットにはぜんぶ「ラブ」が入っている。
商店街にみなぎる「愛」は言わずもがなにしても、
もち蔵は、当然ラブ目線でたまこを撮っているわけだし。
着ぐるみたまこ&かんながラブリーすぎて、メロメロだろうし。
こっそり見ている豆大も、ほんとうは娘が可愛くてたまらないのだろうから(以下略)
たぶんこのときに感化されて、「ラブラブハートもち」を作ってしまった(?)

ところでみどりはというと、
マスターの言葉とデラの慰めで、どうにか気分が晴れたようで、
(そこがちょっと飛躍していてよくわからないのですが)
鳥の飛ぶのを真似したように、元気に「翔ける」。
いちおう自分の気持ちを肯定することにしたのか(?)


以上のような、いろいろな人の「ラブ」の気持ちが錯綜して、
音楽の流れるなかでそれが溶け合ってひとつになる、という表現。
9話のラストでも同じことをやっているわけですが、
2話のほうがもっと本格的で、本家本元という感じ。
「たまこまーけっと」という作品は、きっとこれをやりたかったのだろうなと。




みどりの「ラブ」というのは、
ただの「友情」「独占欲」等であるのか、それを一歩踏み越えた「恋」であるのか、
本人にもわからないし、視聴者にもよくわからないようにぼかされている。

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「誰が誰を好きになってもいいんだよ」というかんなの台詞は、
ガチ百合でも私はぜんぜんオッケーですよ、という意味にもきこえる。
そう取ってもいいと思います。が、ただ、
話全体のことを考えると、それだけの意味でもないはず。

たとえば、もち蔵のたまこラブだって、
みどりの「恋」と同様、本気の恋であってもかまわないのですが、
一方、お隣さんで幼馴染みという、おいしい関係のままにも止めておきたい。
そこをはっきりさせないでアイマイにしときたい、
あんまり生々しい「恋」として描きたくない、というのが多分あるとおもう。

豆大とたまこのイチャイチャも、作品全体にわたって濃厚に描かれました。
この父娘のラブラブを実はいちばん描きたかったのでは?とおもってしまうくらい。
2話の冒頭がどういう風に始まるかを考えれば、
2話の終着点は豆大とたまこの「ラブラブハートもち」の会話なのかもしれません。
(その後でみどりとの登校時の会話や、バレンタインの朝の情景があるわけですが。)

もち蔵とたまこのラブラブも、たまこと豆大のイチャイチャも、
どちらも2話の大事な要素です。
それに、たまこが商店街のことをこよなく「愛して」いて、
商店街のみなさんも顧客に「愛」をふりまく。
商店街全体がバレンタイン色に染まり、甘ったるい「愛」に溢れかえっている(?)
そういうことを全部ふくめての2話だとすれば。

みどりの「ラブ」というのも、
もち蔵や豆大のたまこへの「ラブ」や、商店街に満ちる「愛」と、根本的にちがうものではない。
親子だろうと同性だろうと、愛は愛だし。
恋人だって友達だって家族だって、たいした違いはない。
「ラブ」というのが、誰が誰に向けた想いでもかまわないし、どんなカタチの想いであってもかまわない。区別しない。
(いい意味で)幼児的というか、少女マンガ的というか、
すべての「愛」「ラブ」をいっしょくたにして無差別に肯定しようということ。
商店街はそういうフリーダムな「愛」の支配する世界なのだという。

2話では、全体としてそういうことを言いたいために、
みどりの「恋心」を取り上げて、わざと不定形な気持ちとして、すごくアイマイに描いた。
そのうえで、これは百合の話なの?という一種のミスリードを誘ってもいて、
百合だと思いたければそう思ってもらってもOK、という寛容な(巧妙な)脚本、なのだとおもう。

それから、バレンタインを「本来のバレンタイン」から逸脱させてもいる。
みどりはもともと「男の子にも女の子にも人気がある」女子なのだけど、
2話の最後では男子からチョコを貰ったりしている(!)
アナーキーなバレンタイン…。
それと、かんなは結局たまこに「チョコの家」をプレゼントしたのでしょうか。
いろいろ考えると、かんなはかんなでたまこラブ、ということもあり得る。
この子はみどりとは反対に、思ったことをそのまま言わない。
言葉の裏の気持ちというのがあるのです。他の回でもそう。
いずれにしろ2話は一筋縄ではいかない、いろいろ詰まったお話で、そこが2話のおもしろいところ。


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(まったくの余談。この絵は二重のハートマーク!)




まとめ。

3話は史織の、4話はあんこの単独エピソードといってよいものですが、
2話はみどり単独のお話ではないとおもう。
「たまこまーけっと」において「うさぎ山商店街」をどういうものとして描くか、
という作品全体のテーマを提示している回です(おそらく)。

「うさぎ山商店街」というのは、そもそも何だったかというと、
たまこの「家庭」であり、「母親」であり、
自己愛と世界愛がムゲンに反射し合うような「愛」の空間。
そんな風に前記事で書きました。
2話のバレンタイン商店街のお話は、
脚本と映像の両面作戦で、そういう「うさぎ山商店街」の本質を見せている。

ついでにいうと、
ビデオカメラでの「撮影」という要素が入っているの興味深い。
監督さんのコンテならではでしょうか。
EDの映像もそうですが、「カメラで撮る」ことに、とにかくこだわりがある。
たまこ自身が(外部から見て)ラブリーだということと、
たまこが心から商店街(=世界)にラブしていることと、
その両方を表裏一体で見せるための手段なんでしょう。
「自己愛=世界愛」というのをまさに具体化した映像の作りかた。
ちなみに10話でも、もち蔵がたまこのステージを撮って記録に残してくれている。
彼は、何というか、たまこの可愛さをうつす鏡 or カメラとして、存分に利用されています(笑)


ということで、
2話のバレンタイン商店街のシークエンスは、このアニメの白眉、圧巻。
「たまこまーけっと」のエッセンスは2話と11話にある。
という個人的結論に達しました。
とりあえずそんなところです。
「たまこまーけっと」論はこれでいったんおしまいにします。



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